主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
前をのろのろ歩く主さまの後を歩いていた息吹は、主さまが気を遣ってのろのろ歩いているのだと勘違いしていた。
「主さまありがとう、私が疲れてるんだと思ってゆっくり登ってくれてるんでしょ?やっぱり主さまって優しい」
「…まあな。だが俺を優しいと言うのはお前くらいのようなものだぞ」
「そう?確かにつんつんしてるし無口だし無表情だし助平だけど優しいよ?」
「…最後の助平は余計だ」
地主神を祀っている祠へ行くのは本当に久々のことだ。
結果的にはお参りをするのを忘れていたので、謝罪をしつつ今後も幽玄町を守ってくれるように頭を下げるつもりでいた。
「あ、見えてきたよ。ね、すっごく汚れてるでしょ?ぴかぴかにしますからお許しください」
石の祠に鎮座している大きくて丸い石が地主神だ。
以前見た時は綺麗に磨かれていて光っていたのだが、今は薄汚れているし、着せていたはずの赤い衣も茶色に変化してぼろ布のようになっている。
息吹はたすき掛けをして手桶から柄杓で水を汲むと、背伸びをして祠のてっぺんから水をかけて擦り始めた。
主さまはしばらく傍観していたが…息吹ひとりで掃除をさせるのは忍びなく、息吹がたすき掛けをしている紐を奪うと主さまがたすき掛けをしてたわしを要求した。
「お前は地主神を綺麗にしてやれ。祠は俺がやる」
「うん、ありがとう。動かすといけないかもしれないからこのまま洗いますね」
地主神に話しかけながら柄杓で水をかけて、素手で丁寧に洗い始めた。
普段ろくに掃除をしたことがなかった主さまだが、やり始めると意外と集中してしまい、石の祠はみるみる綺麗になる。
「この布の代わりどうしよう…。あ、そうだ」
閃いた息吹は、首の痣を隠している桃色のお洒落な手拭いを首から外すと、それを地主神に巻き付けた。
…なんだかはいからになってしまった地主神につい吹き出した主さまは、息吹と共に石の祠の前に立つ。
「長い間お参りをしなくて申し訳ありませんでした。主さまの妻の息吹です。幽玄町と主さまと、ここに住んでいる妖たちと住人たちをお守り下さい」
深く頭を下げた息吹の横で、主さまは心の中で同じようなことを地主神に願いつつ、小さく頭を下げた。
「よし、じゃあ帰るぞ」
「私毎日ここに通おうかな。運動にもなるし」
これが、思わぬ効果を発揮する。
「主さまありがとう、私が疲れてるんだと思ってゆっくり登ってくれてるんでしょ?やっぱり主さまって優しい」
「…まあな。だが俺を優しいと言うのはお前くらいのようなものだぞ」
「そう?確かにつんつんしてるし無口だし無表情だし助平だけど優しいよ?」
「…最後の助平は余計だ」
地主神を祀っている祠へ行くのは本当に久々のことだ。
結果的にはお参りをするのを忘れていたので、謝罪をしつつ今後も幽玄町を守ってくれるように頭を下げるつもりでいた。
「あ、見えてきたよ。ね、すっごく汚れてるでしょ?ぴかぴかにしますからお許しください」
石の祠に鎮座している大きくて丸い石が地主神だ。
以前見た時は綺麗に磨かれていて光っていたのだが、今は薄汚れているし、着せていたはずの赤い衣も茶色に変化してぼろ布のようになっている。
息吹はたすき掛けをして手桶から柄杓で水を汲むと、背伸びをして祠のてっぺんから水をかけて擦り始めた。
主さまはしばらく傍観していたが…息吹ひとりで掃除をさせるのは忍びなく、息吹がたすき掛けをしている紐を奪うと主さまがたすき掛けをしてたわしを要求した。
「お前は地主神を綺麗にしてやれ。祠は俺がやる」
「うん、ありがとう。動かすといけないかもしれないからこのまま洗いますね」
地主神に話しかけながら柄杓で水をかけて、素手で丁寧に洗い始めた。
普段ろくに掃除をしたことがなかった主さまだが、やり始めると意外と集中してしまい、石の祠はみるみる綺麗になる。
「この布の代わりどうしよう…。あ、そうだ」
閃いた息吹は、首の痣を隠している桃色のお洒落な手拭いを首から外すと、それを地主神に巻き付けた。
…なんだかはいからになってしまった地主神につい吹き出した主さまは、息吹と共に石の祠の前に立つ。
「長い間お参りをしなくて申し訳ありませんでした。主さまの妻の息吹です。幽玄町と主さまと、ここに住んでいる妖たちと住人たちをお守り下さい」
深く頭を下げた息吹の横で、主さまは心の中で同じようなことを地主神に願いつつ、小さく頭を下げた。
「よし、じゃあ帰るぞ」
「私毎日ここに通おうかな。運動にもなるし」
これが、思わぬ効果を発揮する。