主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
百鬼は1匹1匹が一騎当千の力を持っているので、10匹も集まれば裏山はあっという間に見通しがよく、そして昼を過ぎた頃には鬱蒼としていた獣道も綺麗に整備されて、これで脚を泥だらけにすることもなくなった。
「はい主さま、お茶とお団子。手伝ってくれてありがとう」
「ん。…で?お前はこれから義経に会いに行くのか?」
庭で直に座って酒を飲んで騒いでいる百鬼を眺めながら問うと、息吹はきょろりと辺りを見回してから、首に巻き付けていた手拭いをちらりを捲ってみせた。
「まだ全然消えないの。むしろ痣が濃くなっちゃって、これだとあと数日は無理だよ。主さまの馬鹿」
「早々消えないようにと強くつけた。ざまを見ろ」
「ふんだ、主さまの助平。大助平。大大助平」
…主さまにとっては反論の余地もなく、義経の話をしていることに気付いた山姫は早速物見遊山へ行こうと草履を履いてにっこり笑ってみせた。
「じゃああたしはちょっと義経とやらを見て来ますよ。晴明、あんたはついて来なくていいからね」
「義経殿とは朝廷でよく顔を見かけるし、昨晩は我が屋敷にも招待した仲だよ。…ふふふ、十六夜…この話が気になるのかな?」
「…いや、全然。山姫、後で報告をしろ」
「あいよ。わくわくするねえ」
うきうきしながら屋敷を後にした山姫に手を振って見送った息吹は、主さまにしなだれかかると、同じように濃紺の手拭いで首を隠していることをからかった。
「こんなとこに痣があることをみんなが知ったらどう思うかなあ」
「…絶対にやめろ。それより義経の文に返事など書くなよ。俺に隠し事をするとひどいぞ」
「じゃあ主さまも私に隠し事しないでね。絶対なんだから」
仏頂面で頷いた主さまを置いて立ち上がった息吹は、酒宴を開催している百鬼たちの輪の中に加わって、雪男の手から徳利を奪い取ると、皆の御猪口に注いで労をねぎらった。
「みんなご苦労様。今夜も百鬼夜行があるのにごめんね」
「なんのこれしき。さあお前も飲め。お前が小さかった頃の話をしてやろうか」
わいわい、がやがや。
…息吹を独り占めするには、男の子供が生まれてその子に跡目を継がなくてはならない。
その野望が叶うのは、いつのことやら――
「まだまだ先のことだな」
まだまだ。
「はい主さま、お茶とお団子。手伝ってくれてありがとう」
「ん。…で?お前はこれから義経に会いに行くのか?」
庭で直に座って酒を飲んで騒いでいる百鬼を眺めながら問うと、息吹はきょろりと辺りを見回してから、首に巻き付けていた手拭いをちらりを捲ってみせた。
「まだ全然消えないの。むしろ痣が濃くなっちゃって、これだとあと数日は無理だよ。主さまの馬鹿」
「早々消えないようにと強くつけた。ざまを見ろ」
「ふんだ、主さまの助平。大助平。大大助平」
…主さまにとっては反論の余地もなく、義経の話をしていることに気付いた山姫は早速物見遊山へ行こうと草履を履いてにっこり笑ってみせた。
「じゃああたしはちょっと義経とやらを見て来ますよ。晴明、あんたはついて来なくていいからね」
「義経殿とは朝廷でよく顔を見かけるし、昨晩は我が屋敷にも招待した仲だよ。…ふふふ、十六夜…この話が気になるのかな?」
「…いや、全然。山姫、後で報告をしろ」
「あいよ。わくわくするねえ」
うきうきしながら屋敷を後にした山姫に手を振って見送った息吹は、主さまにしなだれかかると、同じように濃紺の手拭いで首を隠していることをからかった。
「こんなとこに痣があることをみんなが知ったらどう思うかなあ」
「…絶対にやめろ。それより義経の文に返事など書くなよ。俺に隠し事をするとひどいぞ」
「じゃあ主さまも私に隠し事しないでね。絶対なんだから」
仏頂面で頷いた主さまを置いて立ち上がった息吹は、酒宴を開催している百鬼たちの輪の中に加わって、雪男の手から徳利を奪い取ると、皆の御猪口に注いで労をねぎらった。
「みんなご苦労様。今夜も百鬼夜行があるのにごめんね」
「なんのこれしき。さあお前も飲め。お前が小さかった頃の話をしてやろうか」
わいわい、がやがや。
…息吹を独り占めするには、男の子供が生まれてその子に跡目を継がなくてはならない。
その野望が叶うのは、いつのことやら――
「まだまだ先のことだな」
まだまだ。