主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
「息吹、文を預かってきたよ。主さまにはどうせばれるだろうから目の前で渡しておくからね」
縁側で主さまの髪を櫛で梳いてやっていた息吹の手が止まり、そして主さまの切れ長の瞳が鋭い光を発した。
身体から滲み出た妖気に反応した若葉がぎゃんぎゃんと大声で泣き出してしまうと、息吹は動揺しながらも髪紐で長く美しい黒髪を束ねた後若葉を抱っこしてあやしてやりながら、首を振った。
「それ見ないから…母様が処分してくれる?」
「そう言われてもねえ…。本当に見なくてもいいのかい?」
「うん、義経さんには悪いけど…主さまに誤解されたくないし、義経さんにも誤解してほしくないから」
その言葉に嬉しくなった主さまだったが、そんな感情を隠すようにして敢えてぶっきらぼうな口調で息吹を問い詰めた。
「…だがまた会いに行くんだろう?」
「うん…だって…相模たちのこと聞きたいし。父様からも聞けると思うけど、私…」
――言わずとも息吹の気持ちはわかる。
幼い頃に幽玄町を出て、16になるまでの6年間を平安町で過ごした来たのだ。
だがまさに箱入り娘の如く晴明の屋敷から出ずに育ったが、あちらで懇意にしてくれていた道長や、ひょんなことで出会った相模や萌を会えなくなったことは寂しいだろう。
そんな寂寥感を非難するつもりもないし、する権利もない。
「俺の機嫌を損なうようなことをしなければ何をしてもいい。お前は俺の妻なのだから、俺の妻として胸を張って会いに行け」
「ほんとっ?お会いしに行ってもいいの?主さまありがとう!」
腕に抱き着かれて鼻の下が伸びてしまっただらしない顔を山姫にばっちり見られてしまった主さまは、そそくさと不可侵の夫婦共同の部屋に籠もってふて寝を開始。
息吹はようやく泣き止んだ若葉を簡易の床に寝かせて一緒に寝転びながら、小さい紅葉のような手を握って優しい声で話しかけた。
「照れ屋さんなんだから。ねえ若葉、若葉にも早く主さまみたいな優しくて素敵な殿方が現れるといいね」
「おお、そこに居たか。若葉を散歩にでも連れて行ってやろうと思って今日は早めに来たぞ。よしよし、大人しく寝ていたか?」
「あ、銀さん。今ね、若葉に素敵な殿方が現れるといいね、って話しかけてたの」
すると銀は耳をぴょこんと動かして嫌そうな顔をすると、嬉しがって声を上げる若葉を抱っこして鼻を鳴らした。
「あと16年は駄目だ。若葉をちゃんと幸せにしてくれる男でないと絶対に嫁がせないからな」
親馬鹿炸裂の銀はそう言って息吹を笑わせた。
縁側で主さまの髪を櫛で梳いてやっていた息吹の手が止まり、そして主さまの切れ長の瞳が鋭い光を発した。
身体から滲み出た妖気に反応した若葉がぎゃんぎゃんと大声で泣き出してしまうと、息吹は動揺しながらも髪紐で長く美しい黒髪を束ねた後若葉を抱っこしてあやしてやりながら、首を振った。
「それ見ないから…母様が処分してくれる?」
「そう言われてもねえ…。本当に見なくてもいいのかい?」
「うん、義経さんには悪いけど…主さまに誤解されたくないし、義経さんにも誤解してほしくないから」
その言葉に嬉しくなった主さまだったが、そんな感情を隠すようにして敢えてぶっきらぼうな口調で息吹を問い詰めた。
「…だがまた会いに行くんだろう?」
「うん…だって…相模たちのこと聞きたいし。父様からも聞けると思うけど、私…」
――言わずとも息吹の気持ちはわかる。
幼い頃に幽玄町を出て、16になるまでの6年間を平安町で過ごした来たのだ。
だがまさに箱入り娘の如く晴明の屋敷から出ずに育ったが、あちらで懇意にしてくれていた道長や、ひょんなことで出会った相模や萌を会えなくなったことは寂しいだろう。
そんな寂寥感を非難するつもりもないし、する権利もない。
「俺の機嫌を損なうようなことをしなければ何をしてもいい。お前は俺の妻なのだから、俺の妻として胸を張って会いに行け」
「ほんとっ?お会いしに行ってもいいの?主さまありがとう!」
腕に抱き着かれて鼻の下が伸びてしまっただらしない顔を山姫にばっちり見られてしまった主さまは、そそくさと不可侵の夫婦共同の部屋に籠もってふて寝を開始。
息吹はようやく泣き止んだ若葉を簡易の床に寝かせて一緒に寝転びながら、小さい紅葉のような手を握って優しい声で話しかけた。
「照れ屋さんなんだから。ねえ若葉、若葉にも早く主さまみたいな優しくて素敵な殿方が現れるといいね」
「おお、そこに居たか。若葉を散歩にでも連れて行ってやろうと思って今日は早めに来たぞ。よしよし、大人しく寝ていたか?」
「あ、銀さん。今ね、若葉に素敵な殿方が現れるといいね、って話しかけてたの」
すると銀は耳をぴょこんと動かして嫌そうな顔をすると、嬉しがって声を上げる若葉を抱っこして鼻を鳴らした。
「あと16年は駄目だ。若葉をちゃんと幸せにしてくれる男でないと絶対に嫁がせないからな」
親馬鹿炸裂の銀はそう言って息吹を笑わせた。