主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-②
仲直りをしてほっとした主さまは息吹に見送られていつも通り百鬼夜行に出た。

だが…どうしても口元が緩むのを隠すことができず、後ろを行く銀から何度もくすくす笑われてむっとなった。


「…何がおかしい」


「お前は最近感情を隠せなくなったな。息吹と仲直りしたんだろう?ん?正直に言え」


「だからどうした?お前に関係ない」


銀が馴れ馴れしく隣に移動してきて、にやにや笑っている顔を見せられた。

ふわふわの耳も尻尾もぴょこぴょこ動きまくり、からかう気満々でいる銀を睨んだ主さまが不快げに鼻の頭に皺を寄せると、銀は笑い声を上げて主さまの背中をど突いた。


「関係なくはないぞ。息吹は俺が留守の間若葉を預かってくれているし、息吹の機嫌が悪いと晴明の機嫌も悪くなる。あいつらは俺の身内も同然だからな」


「ふん、お前がふらふらしているからうちで若葉を預かる羽目になっていることを忘れるな」


「つまり息吹とふたりきりでいちゃいちゃしたいというわけだな?それは参った参った、息吹がどうしても若葉を預かりたいというので俺は仕方なく預からせてやっているんだ」


「……」


恩着せがましい言い様に閉口した主さまは、銀を無視して暴れ回る妖の討伐に向かう。

無口で無表情な男だが、そんな主さまを慕う妖はとても多く、百鬼に加わりたいという妖も数えきれないほど居るが、主さまが求める水準は非常に高い。

人を殺したり食ったりしてはいけない、というのを大前提に、鉄の掟がいくつも存在するので諦める者は多いが…百鬼に加われば、それだけで周囲から尊敬されて拍がつく。


「おお、今夜は主さまが率先して討伐に行ったぞ。どうしたんだ?」


「さてな、また息吹と何かあったんだろうよ。近頃の主さまはわかりやすいな。ははは、これも息吹のおかげか」


主さまと息吹を引き合いに出してわいわいしながら主さまに続いて行く百鬼たち。

銀も愛用の2本の刀を抜くと、主さまの背中を預かって一閃を投じた。


主さまと百鬼の結束は強く、今夜の百鬼夜行も誰ひとり欠けることなく、無事に皆幽玄町へと戻った。
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