カラフル
ナナは頭をポリポリかきながら、階段の端にもたれてハァッとため息をつく。
「彼氏が出来た相手に片思いなんか、したくないもん」
ズボンのポケットに手を突っ込みながら、向こうに目をむける彼。
「まだ付き合ってないよ。映画に行く約束をしただけだし」
付き合ったと思い込まれていたから、否定した。
だけど、ナナはすぐにこう言ったんだ。
「それって付き合う前提じゃん。好きでいてもしょうがないだろ」
一線を引く彼の横顔は、ふてぶてしいというよりは、冷酷という言葉が似合うだろう。
あたしはつばをごくりと飲み、泣き出しそうになる感覚をこらえる。
「やっぱり、真剣じゃなかったんだね」
ナナは本気じゃなかった。
その程度の気持ちで、ずっとあたしを振り回していたんだ。
悔しい、と思った。
「出会ってすぐに『付き合って』とか言うし、今だってすぐに気持ちを切り替えてる。……ナナは軽いね」
この台詞を言う間、頭の中で今までのことを思い出していた。