カラフル
初対面なのに、人懐っこく話しかけてきたナナ。
授業中に髪の毛を引っ張ってくるし、休憩時間もベタベタくっついてきた。
うっとうしく思ったりしたけれど、困っている時は必ずと言っていいほど、側にきて励ましてくれていた。
馬鹿で、変態で、お調子者のナナ。
だけど、本当は優しくて、照れると口数が減って、真面目なときは男の子ってところを見せてくる。
時たま見せる、あの笑顔が好きだった。
「もういいよ」
あたしはその言葉を置いて、彼から離れようと思った。
「すぐじゃないし! 席替えの前から、郁のこと好きだったから言ったんだよ!」
そう言って、ナナは立ち止まるあたしに、好きになった経緯を話していく。
「ずっと、いいなって思ってた」
ナナは、教室で朝香たちと騒ぐあたしを見て、好きになったと言う。
「席替えのとき、ずっごく嬉しかったし。その勢いで、付き合ってって言った。でも、断られたとき、俺のこと何も知らないから仕方がないなって思ったんだ」
真剣な顔をするナナの言葉は、素直に受け止めることが出来た。
ふざけた口調じゃない分、気持ちが本気だったことを知らせてくれる。
「だから、知ってもらおうと頑張ってた。……でも、先輩と映画に行くんだろ? これ以上、頑張っても無理じゃん。それとも、郁は自分が彼氏を作っても、俺に片思いさせたいの?」