カラフル

驚いたあたしは、洋介に「待ってて」と告げて、バタバタ家中を走り回った。

「お前のスッピンは中学んときに見てるんだから、いちいち化粧なんかすんなよ」

15分くらい待たせたことで、洋介はご立腹だった。

メイクも中途半端で服もちゃんと選んでないのに文句を言われ、急いで用意したあたしはしょんぼりする。

「てかさ、普通、家に上げるでしょ? こんな大雨なんだから」

突然、尋ねてきたくせに、洋介は相変わらずむかつく台詞を並べていく。

いつもなら、売り言葉に買い言葉で喧嘩に発展するはずなんだけど。

「……部屋、汚いんだもん」

なんか今日は言い返す気分じゃなかった。

中学のとき、放課後に男女数人で遊んで、その帰りに、洋介が家まで送ってくれたことがあった。

たった一度きりのことだけど、家を覚えてくれていることがすごく嬉しかったんだ。
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