カラフル

「同じ服を着て同じメイクをしても、佐奈には叶わない……」

自分が何を言いたいのかさえ、途中でわからなくなっていた。

でも、このまま洋介を帰らせたくはなかったの。

告白をしようかと思ったのに、口から出る言葉は卑屈な台詞ばかりで。

こんなことを言いたいんじゃないと思った瞬間、あたしは言葉を詰まらせてしまった。

「…お前さ、そんなことを考えて、あの子らと友達やってんの?」

振り返る洋介は、少し軽蔑しているみたいだった。

首を横に振るあたしは、目にためた涙を頬に流していく。

そんな風に思って友達をしていたわけじゃない。

だけど、ナナに好かれる郁や、モデルをしている佐奈と一緒にいると、自分のことが嫌になるときもあったことは事実だ。
< 94 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop