赤い月 終
『共に堕ちて増殖する筈の闇に、人の強い思いを織り込む事で意思を持たせ、その闇を以て赤光の闇を抑える』術。
それが千景が造った加護の術なのだと、うさぎは言った。
決して他と交わらない、純粋な『闇』。
決して折れない意思を持った、清らかな『闇』。
鬼神なら、うさぎなら、一人で加護になれるのだ。
他の者を犠牲にすることなく。
「…
聞いたのか?」
一層目を鋭く細めたうさぎが、景時に低く問いかけた。
えーっと…
ソレは、アノ話だよね?
やっぱ、聞いちゃマズかった?
でも、手遅れっつーか…
どーしよ?
景時はもう一度、チラリと隣の黒曜に視線を… って…
(いねぇ?!)
助けを求めて目だけで辺りを見回すと、黒曜は最初にいた窓際にシレっと立っていて…
アイツ、逃げやがったぁぁぁ?!
俺が『聞いた』ってコトは、『話した』ヤツもいるってコトで。
怒られンなら一緒だろーがよ。
関係ねぇ、みたいな顔してンじゃねーよぉぉぉ!