赤い月 終
だがうさぎは、怒るつもりはなかったらしい。
長い睫毛を伏せて溜め息を吐いた後、どこか悲しげに微笑んで景時を見た。
「聞いたのならわかるだろう?
妾の魂は、疲れきっておる。
そなたの中で眠らせてはもらえぬか?」
グハっ ヤバい。
ナニ? その甘美な響き。
危うく『喜んで☆』とか、即答しちゃいそうデシタYO!
しっかりしろ、俺!
ココは断固として…
「断るっっっ!!」
緩みそうになる口元をなんとかへの字にひん曲げて、景時は声を張り上げた。
あまりにも明確な拒絶に、うさぎの頬が軽く膨らむ。
そんな可愛い顔しても、ダメなモンはダーメ。
だって…
「うさぎは疲れてなんていない。」
「何故…
黒曜から聞いたのだろう?」
「聞いたよ?
でもソレは、『紅玉』って人の話だ。」
夜が香る。
君の麝香が仄かに香る。
君は… うさぎだ。