赤い月 終
微笑みを浮かべたままの景時を見て、うさぎは唇を噛みしめた。
彼は本気だ。
本気で加護を拒んでいる。
決意を翻すことはないだろう。
(ならば、どうすれば…)
もう時間に余裕はない。
次の月は昇らない。
うさぎは悲痛な声を喉から絞り出した。
「それで、黒曜に闇蝕を?
あれは危険なのじゃ。
そなたを月夜のような目には」
「違う。」
いつの間にかうさぎの後ろに忍び寄っていた黒曜が、彼女の言葉を遮った。
細い身体に腕を回し、肩を、腰を、背中から強く抱く。
それは抱擁というより、拘束…
うさぎの自由を奪った黒曜が、その耳元で呻くように言った。
「闇蝕じゃない。
景時が俺に望んだコトは…
『死』だ。」