赤い月 終
「?!」
目を見開いて自分を凝視するうさぎに、景時は一度だけ睫毛を伏せて肯定の意を伝えた。
うさぎがその身を投げ出す前に。
自分が自分じゃなくなる前に。
死を。
鏡に負わされた傷が驚異的なスピードで治っていくのを見て、予想はしていた。
試しに自らを傷つけてみて、確信した。
今の自分は普通の方法では死ねない。
もう、半分はオニだから。
だが浄化のチカラは効かなかった。
まだ、半分はヒトだから。
だからあの夜、黒曜に…
「許さぬ!!」
うさぎが悲鳴を上げた。
銀の髪を振り乱し、力強い腕の中でもがきながら…
『動くな、か』
うさぎが呪を放つ前に、浅黒く大きな手が彼女の口を塞いだ。