赤い月 終

「強引に加護になるつもりか?
そんなコトしたって、景時が苦しむだけだ。
わかってンだろ?」


低く囁いた黒曜はうさぎを器用に回転させ、益々強く抱きしめた。

暴れる彼女を、優しく、だが確実に抑えつけ、宥めるように言葉を紡ぐ。


「アイツが決めたことだ。
これがアイツの望みなんだ。」


徐々にうさぎの身体から力が抜けていく。


「…望み?
…景時の?」


「そうだ。
その思いを受け取ってやれ。

景時のまま、逝かせてやるんだ。」


「…」


遂にうさぎは動かなくなった。

黒曜の胸に顔を埋めたまま。

黒曜に大人しく抱かれたまま…


(うさぎ、泣いてンのカナ…)


二人をぼんやりと眺めながら、景時は思っていた。

< 210 / 279 >

この作品をシェア

pagetop