叫びたいのは、大好きな君への想いだけ。
寒い通学路。
あの日あげたマフラーは今も優花ちゃんの首もとを温めている。
返すって言われたけど断った。
あともう少しで高校入試。
それが終わればもうあっと言う間に卒業なんだろうな。
「優夜はさ、頭もよくて運動神経もよくて、友達もいっぱいで……」
「うん」
「私が持ってないものたくさん持ってる。それがすごく羨ましいの」
真っ直ぐ前を向いたまま、弱音を吐く優花ちゃんの表情はほんのり笑っていたけれど、いつもの輝きがない。
どこか切なさをふくんだような、そんな表情にも見てとれた。
そんな顔じゃない、俺が見たい顔は。
もっと、いつものように笑っていて欲しい。
「そんなことねぇーよ」
「え?」
「優花ちゃんも、優夜ちゃんが持ってないものたくさん持ってる」
俺の言葉に首をかしげた優花ちゃんに笑いかける。
優夜ちゃんが持ってない優しさ。
人を想いやれる心の温かさ。
俺を釘づけにするその笑顔。