叫びたいのは、大好きな君への想いだけ。



「優花ちゃ……」


「……帰る」



俺が近づくと優花ちゃんも後ずさった。



「待って、優花ちゃん」


「帰るってば!離してよっ!!」



帰ろうとする優花ちゃんのことを放っておきたくなくて、なにがあったのかちゃんと話して欲しくて手を掴んだ。


……でも。


こんなに取り乱した彼女を
こんなに悲しそうに泣く彼女を見るのも


初めてで、
どうしたらいいか、わからなくて。


大切な人のはずなのに、大好きな人のはずなのに、俺の脳内の国語力ではかける言葉も見つからない。


どれもしっくり来なくて。
どれも彼女を安心させられる言葉じゃない気がして。


そんな自分が無力すぎて、すごくむかついた。


いつもくだらないことはベラベラと雪崩のように出てくるのに。


こんなときに限ってなんでだよ……。


さっき彼女を囲んでいじめていた女の子たちの中には、この前優花ちゃんに花壇の水やりを押し付けていた女の子もいたから。


もしかして、俺のせいだったりするのか……?


俺があの後あの子にヒドイ言い方したりしたから……。


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