叫びたいのは、大好きな君への想いだけ。


キツそうに座り込む相沢に俺もしゃがみ込んで相沢の背中を撫でる。



「頭が……痛い……」


「大丈夫か?ちょっと休もう」


「うん……。ちょっとトイレ行って来てもいい?」


「わかった、気をつけろよ?俺はここで待ってるから」



大きな時計塔の前を指差した。
頷いた相沢は立ち上がるとゆっくりと人混みに消える。


……相沢、本当に大丈夫なのか……?


最近ずっと調子良さそうだったのに。


不安が募って行く。

さっきのレストランでの話も気になる。


……記憶、戻って来ているのかな。



「遅いな……相沢……」



彼女がトイレに行くと言ってから30分は経った。
周りを見ても彼女の姿は見えない。
待ちぼうけしていると段々と寒さが身体を震わせた。


……と、思ったら。



「お母さん見て!雪だ!!」



近くにいた子供が無邪気に叫んだ。

上を見ると大粒の雪が舞い落ちて来ていた。


……ホワイトクリスマスイブだ。


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