神龍と風の舞姫
刹那ー

幾本かの炎の槍が体ごと貫く

「…お前、あの時の商人だろう」

チリチリと燃える炎を見つめながら海斗が低くつぶやく

燃え盛る炎に焼かれて苦しいはずなのに、フードの下で満足そうに口元がゆがむ

その反応は肯定だった

「置物程度で満足していれば、命を落とすこともなかったのに」

喧嘩を売る相手が間違っているのだ

「言っただろう。ずっと探していたのだ。神龍という名の神を。あいつらに見つかる前に我が手に、そう思って、ずっとー」

その後は言葉にならなかった

ズシャ、とすべてが崩れ落ちる

水の操る魔力を持つものだったためか、灰にならずに霧散していく

普通相性の悪いはずの炎だが、海斗ほどの力になれば、水すらも蒸発させてしまう

最後の一滴が消えうせ、それまで教会を包み込んでいた禍々しい雰囲気が一掃される

「…諦めの悪い奴らだな」

彼の者が放ったあいつら、が何を指すのかを知っている海斗は、しるふに届く程度の声でつぶやく

海斗を追って、欲してやまない世界を闇にと引きずり込む集団

はやりずっと逃げおおせることはできないのか

すっと瞳を細めた海斗の視界で、しるふがふっと息をついたのと同時に体制を崩す

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