神龍と風の舞姫
「…しるふ?」

大丈夫か、案じるように崩れかけた華奢な体を支える

「ごめん。気が抜けちゃった」

へへへと笑うしるふの顔には明らかに疲労がにじんでいる

「夢に見たと言っていたな」

「うん、今日のことだったと思う」

また力が強くなったか

疲労困憊といった様子のしるふを見つめながらそっと瞳を細める

海斗の忠誠者となったことでしるふの力は、海斗の力の影響を受けて次第に強くなっている

もともと器は大きいのだ

けれど今まではそう使う力も多くなかったし、強くはなかったから成長しなかっただけ

力が強くなっていいことなんて、海斗の経験上ない

未来が見えたって、それがいつだかわからなければ意味がないし、自己の負担となるだけだ

「そうだ、海斗どこにいた?」

海斗の腕に寄りかかりつつ、しるふが見上げてくる

「宿にいたが…?起きたらしるふが居なくて、探してたんだ」

海斗もしるふ同様、しるふの存在を感じられなかった

海斗の返答に、じゃああそこからすでに罠だったわけか…と一人納得する



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