竜王様のお約束
玉座へと向かって凛と歩くその少女は、リョクリュウと呼ばれたことと緑色の髪をしていることから、緑龍であろうことは容易に想像できた。


しかし、その身に着けている衣装は黒である。竜王と同じ色の衣装ということは、すなわち竜王の所有するものを分け与えられた事を意味し、それは妃以外には有り得ない。


まだ10代前半に見える少女は、当然のように階段を上りハクリュウと玉座の間に立ったのだが、幼いながらもただならぬ存在感を放っていた。


そんな気高い少女とは反対に、玉座から立ち上がった竜王の姿はあまりに緊張が見て取れて、とても気弱なものだった。


「これより竜王になった私の生気を与えます。
だから天界の皆さん、私の生気を取り込み、私とそして妃のリョクリュウと、共に歩んで行きましょう。」


その言葉を聞いて天界の民たちは、またもざわついた。ハクリュウやコウリュウとは全くかけ離れた竜王の誕生だったからだ。


「それと、一つ命令を出します。
先々代のハクリュウ王と先代のコウリュウ王には、私の補佐についてもらいますので、竜王と同等の待遇でお願いします。」


「「「おぉ・・・」」」


民たちは納得するような声を出した。


「では、これより生気を分け与える儀式を行います。
リョク様、いいですね?」


小声で付け加えてから、コクリュウはリョクを伴って広い広い庭園へと移動した。
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