恋の扉をこじあけろ


「これは失礼」


そう言ったくせに、まだわたしを見ている。


そんなに信用ならないのかな。

わたしのこと、子ども扱いしてる…?


そりゃ、的井先生からしたら、わたしは20代に足をかけたばかりのコドモかもしれないけど。


ちら、と的井先生の方を窺うと、先生と目が合ってドキッとする。



先生はシャンパン片手に、空いているほうの手をわたしに伸ばしてきた。


「せっかくだし、食べ方も見ておこうかな。治療に役立つかもしれないし」


顎の動きがわかるように、わたしの髪を耳にかけた。


的井先生の少し冷たい指先がわたしの火照った耳を掠った。


冬実たちは話に夢中なのか、こっちを見る様子はない。




眩暈が、する。


< 180 / 278 >

この作品をシェア

pagetop