恋の扉をこじあけろ
冬実は苦笑しながらオムライスを一口食べた。その言葉にどきりとする。
何も、なかった。
冬実は知らない。
「あのね、冬実」
「ん?」
顔をあげた冬実と目があうと、言うのがなんだか恥ずかしくなってきた。
でもこう切り出したからには、冬実はわたしがちゃんと言うまで問い詰めてくるだろう。
「あのね」
「うん」
「ケチャップついてる」
わたしは口もとを指さしてみせた。
冬実は眉を寄せながら口を拭うと、わたしをじっと見てきた。
「それで?」
やっぱり冬実は、わたしが何か言おうとしていたことに気づいているみたいだ。
ごまかせないと悟ったわたしは、顔を下に向けて手をもじもじさせた。
「実は…」
小さくなるわたしの声を拾おうと、冬実が耳に手をやりながら身を乗り出してきた。
「キス、した」
「え!?」
「かも」
「かもって何」