恋の扉をこじあけろ
冬実がスプーンをお皿に落とし、ガチャンと音をたてた。
その音に反応してまわりにいた学生がちらちらこちらを見てきて、その視線から逃れるように縮こまり、小声を出す。
「なんか、夢?かもしれないなぁと思ってきて」
それにしては、先生の吐息や、首に触れたときの感触を思い出せる。
唇が触れたときのことを思い出し、やっぱり夢じゃないかも、と耳まで熱くなった。
「へええー。私が寝てる間にそんなことがあったんだー。いやらしー!」
「そんなこと、大きな声で言わないでよ!」
もう、冬実のばか!
皆が注目してるじゃない!って、これはわたしが叫んだからか。
好奇の視線が他方から集まってきて、こそこそと腰を下ろした。
「どうしたらいい?」
「どうしたらいいって、何が?」
「わたし…もう先生に会えない」
切実なわたしの嘆きに、冬実は失礼にもぷっと吹き出して、けらけらと笑い始めた。