†captivity†(休載)


微かな水音が響く、その空間。

彼のものがあたしに絡みつき側部を緩やかになぞり、押し上げ、刺激してくる。

あたしの中にあるキスの知識とはかけ離れた刺激に、また一つ知らなかったものを覚えさせられていくのを感じる。



ただ口を付け合って、恥ずかしくなって、幸せに浸るような、そんな生易しいものなんかじゃなかった。

もっと情熱的に、食べられてしまうかのような勢いに、呼吸すら奪われてしまうように。

あたしを求め、追いかけて、捕まえて、撫でるように優しく、それでいて力強く、あたしの心の奥底まで犯そうとしてくる。



音を立てて離れた口の端から伝う液を、彼が舌で撫でる。



「急、に……」

「かわいい」

「苦し、ん、ですけど」



息苦しさから、呼吸が荒くなる。

心底愉快そうなその表情がまた、余裕そうでむかつく。



「気分良くなったから、これで悟のことはチャラにしてやるよ」

「……東先輩の、こと?」



なんのこと?と眉を顰めるあたしに、彼は耳に近付いて囁く。



「悟が、お前に触れたこと」



あぁ、頭や頬を鷲掴みにされたりした、あの件ね……あれまだ忘れてなかったのか。

東先輩のせいでとんでもない仕打ちを受けたと、彼を恨んでいると、背中と膝裏に腕が回って持ち上げられる。

あ、俵担ぎじゃない……なんて少し感動したのも束の間、緩やかに降ろされたのは柔らかなベッドの上だった。

そこで「ん?」と少しの違和感を覚える。

もう寝るのだろうか?



しかしそのまま彼もベッドに上がってくると、あたしを両腕で囲うように乗り上げて来る。

数秒、この状況を理解するのに費やした。



「心くん……?」

「ん?」

「なに……する気ですか……?」



緩やかに降りて来た顔が、耳の横で吐息を漏らす。

今度は一体何が始まるのかと、身構えると。



「お前を、愛す」



そう、かすれた声が今度は耳を犯し、耳の上部がぱくりと食まれる感触が伝わって来た。


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