瑠哀 ~フランスにて~
「それでは、私はこれで失礼します。

フォンテーヌ様、近く、またパリに行く機会がありますので、

その時にお会いできるのを楽しみにしています」


 ピエールは、わかった、と短く頷いた。


 その男が去るのを待って、マーグリスが聞いてきた。


「息子の友人だと言うのは……?」

「直接的には、存じ上げておりませんの。

ただ、彼の妻のセシルは私の友人でして」


 マーグリスは目を開いてルイを睨むようにした。


「私達はニースに滞在しているのですが、悪質な悪戯がありましてね。

ご存知ではありませんか?

誰かが海岸に花火を持ち込み爆発させた為、

周辺の民家にかなりの被害がでている、と。

その中の家に、偶然なのですが、セシルの別荘も含まれていて、

大半が焼けてしまったんです」

「なんと――?!

それで…、その友人はどうなったのか……?」

「彼女は無事です。

今は、こちらのフォンテーヌ氏の別宅で、落ち着くまで、

私と一緒にいることになっています」

「他に――他に、誰か……。その友人だけ、そこにいるのだな」

「男の子も預かっています。

とてもかわいい男の子で、名をユージン、と」


 マーグリスは瑠哀を見上げた。


「もちろん、ご存知ですよね。あなたの孫ですもの」

「なに?なんの―――ことを言っているのか、私にはわからないな」
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