瑠哀 ~フランスにて~
 そっと瑠哀から離れて行く朔也の唇と、目の前にあるとても穏やかで暖かい瞳を、瑠哀は呆然として見つめていた。


『ルイ、俺が一緒にいるよ。

ずっと、君の傍にいる。

君の傍にいるから

―――だから、今だけは、力を抜いていいんだよ、ルイ』



 その言葉に体中が震えた。

 なにも感じなかったのに、その言葉で、胸が苦しく抑えていたものがこみ上げてくる。



 両手で顔を覆い、その指の間にポロポロと涙が流れ落ち出した。

 肩が震え出し、ふっと、下を向いた。



 その細い肩を、朔也はもう一度優しく抱き締める。


 ぎゅうっと、瑠哀の全てを包み込むように、どこまでも優しく抱き締めていた。
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