瑠哀 ~フランスにて~
『ここが、バスルーム。あっちが、俺の部屋で、ここが居間とキッチン』


 朔也は歩きながら手早く瑠哀に室内を案内する。

 日本で言えば、マンションと言うのか、億ションと言った方が正解なのか、ものすごい高級なアパートであった。



『君の部屋は、こっち。何でも好きに使って構わないから』



 瑠哀が荷物を整えると、朔也はそれらを持ってレセプションに行った。

 瑠瑠哀がチェックアウトする旨を伝え、先払いしていた分の残りを返金してもらい、そのままタクシーを捉まえて、朔也の家に来た。



 ドアはセキュリティーロックがされ、中に入ると制服を着た男が立っていた。

 ここに出入りする人間をチェックするバトラーだろう。



 朔也は彼に、瑠哀は自分の大切な客人だと伝え、リフトに乗り込んだ。



 朔也の部屋は一番上の階で、どうやら朔也以外の住人はいないようであった。

 学生と聞いていたが、これが一介の学生が借りられるようなアパートではない。



 瑠哀は小さな溜め息をついた。


『ピエールと同様、あなたも只者じゃないのね……』


 それを聞き咎めた朔也は、笑った。


『俺は、ピエールほど不遜じゃないよ』



 確かに、ピエールの不遜さは只者ではないが、そう言う意味で言ったのではないことも朔也は知っているのだろう。

 特別、話したいようでもないので、瑠哀はそのままにしておいた。



 荷物を瑠哀の部屋に運び終えた朔也が、瑠哀を見上げる。


『これでおしまい。おなかは空いてない?』


 瑠哀は首を振る。
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