森の人
「何か知ってるんですか?」
コウヘイが静かに聞く。
「一番身近で、一番恐いもの」
「何?」
サヤカの目をジッと見つめる茜。

「五つ目の恐怖は、『私達』よ」

一瞬の沈黙が、辺りを包む。
「どういうことですか?」
コウヘイが真剣な顔で聞いた。

「私があの女に言われた言葉は
『最後の敵は、自分達の中にいる。鍵で扉を開け、通れる者はただ一人。譲り合うか、勝ち取るか』
なの」

「敵がこの中にいる?」
四人を、一人一人ゆっくり見る拓也。
「扉を通れるのは一人だけ?」
同じく、自分以外の四人を見るコウヘイ。
「敵って、誰?」
拓也以外の三人を見る茜。
「仲間を犠牲にして扉を通ろうとする人」
コウヘイが呟くように言った。
「その敵と戦うのが、五つ目の恐怖?」
確認するようにサヤカを見る拓也。
「じゃあ、この死の審議で、そいつを犠牲にしてしまえば、一石二鳥じゃない」
サヤカを見て言う茜。
「でも、一体誰が?」
肘を付き、考え込むコウヘイ。
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