ひとつ、ベッドの中
第六章

赤い車

これが修羅場というものなんだろうか……。


香澄さんと廊下ですれ違った時、別人かと思う様な目で睨まれた。


明るくて、社交的だった香澄さんは見る影もなく。


凌ちゃんにあんなことを言われてしまった手前、出しゃばって誤解を解くことも得策だとは思えなくて。



……目を逸らしてしまった。



あたしと宏太君の仲だって、そうだ。




『少し時間、くれ……』




あたしに好きな人がいるのを知っていて、告白してくれた。


叶わぬ恋に泣いていたあたしを、救ってくれた。



なのに、その相手があんなことを言ったら。



混乱するに決まってる。


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