ひとつ、ベッドの中

「多分……」


静けさの中に落とされた声。

あたしは顔をあげた。


「一番最初の記憶かもしれない」


視線を合わせないように、凌ちゃんは淡々と語る。



「母親が、包丁を手にしている姿が」



……っ。


「そんな……」


一番最初の記憶がそんなに残酷なものだなんて。

悲惨、それ以外の言葉が見つからない。


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