ひとつ、ベッドの中
「いつも泣いてた。泣くことしか出来ない自分嫌がでたまらなかった。早く大人になりたかった」


凌ちゃんが大人びている理由が、わかった気がした。

苦しみを味わった人間ほど、色んなことを我慢するから。


「両親の口論、夜な夜な鳴るサイレンの音。ベッドの中で一人、毛布を被って聞いてた」


きっと、その時の凌ちゃんは、当時のあたしより幼い。



「そして、あの日―」


凌ちゃんが、固く目を閉じた。



……っ

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