ひとつ、ベッドの中
肩に手を置いて、あたしの体を少し離す。


「詩織が俺を求めてくれるように、俺も、詩織なしじゃいられなかった。恋なのか、なんなのか、分からなかった」


愛しい言葉が耳を震わせる。


「詩織が誰かの物になったら諦められるって思ってた」


長い指が、優しく髪をなぞる。


「けど、違った。嫉妬して、挑発して、邪魔ばかりして。詩織を困らせるだけだってわかってるのに、止められなくて」


映画館での言動。

どうすればいいかわからなかった、曖昧な態度。


大人な凌ちゃんが、それほどまでに不器用に。


あたしに向かって来てくれたことが、愛おしくてたまらない。


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