ひとつ、ベッドの中
凌ちゃんっ……


――ガタッ。

立ち上がったはずみで、机が大きく動く。


「おかえりなさい」


胸に飛び込もうと思ったのに。


それより早く、凌ちゃんがあたしを抱き締めた。


「……」


あたしの頭をふわふわと撫でてくれる凌ちゃんは、今何を想っているのだろう。


凌ちゃんの手に、花束はなかった。

きっと受け取ってもらえたんだろう。


凌ちゃんの鼓動を聞きながら、あたしはずっと黙っていた。


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