白銀の女神 紅の王(番外編)
「その汚らわしい手で触らないでよね」
曇天の下、不穏な雰囲気が漂う中、ノーラの高い声が響き渡る。
その一言だけで状況を察知したブルームは私と子供たちの手を取って草むらに隠す。
「ここに隠れていろ」
険しい顔をしてそう言ったブルームに私と子供たちは緊張の面持ちで頷き、息をひそめた。
ブルームは小さく頷き、沿道を真っ直ぐ歩いて行った。
「ノーラ!」
何を思ったのか、ブルームは思いっ切り大きな声でノーラの名を呼んだ。
この雰囲気に似合わない明るい声にノーラと男たちの視線はブルームに集まる。
相手は男三人なのに出ていくなんてブルームはどういうつもりなのだろうか。
「ノーラ、探したんだぞ。道に迷っていたのか?あぁそうか、お前ここに来るの初めてだもんな、こんな事だったらお前の家まで迎えに行くんだったな。あんたたちはノーラに道案内を?こいつ本当に方向音痴でさ、ここまで案内してくれてありがとよ」
終始笑顔で話すブルームは相手が口を出す暇を与えない程に駆け足でしゃべり、「じゃ!」といってノーラの腕を取ろうと手を伸ばした。
ブルームの勢いに飲まれかけていた男たちだがハッと我に返ってブルームの手をパシッと払う。