白銀の女神 紅の王(番外編)



元々男に対してあまり良い印象がないため、もし私も捕まったらと思うと震えがとまらない。

カタカタと震えていると、小さな手が二つ私の冷たくなった手を包む。

ハッとして視線を戻せば、アベルとココットの不安げな瞳が私を映していた。



アベル…ココット……

不思議なことにアベルとココットの不安げな表情に先ほどまでざわついていた心が静まる。

この緊迫した光景に怯えているのは私だけじゃない。

まだこんなに幼いアベルとココットは私よりも不安が大きいはずだと思った時、自分が抱えている不安や恐怖よりも、子供たちを守ってあげなければという使命感の方が大きくなった。




「大丈夫」


小さな声でアベルとココットに声をかける。




「私が出ていったら貴方たちは森を迂回してフェルトさんの家まで行きなさい。何があっても立ち止まっちゃだめよ」


早口でそう言った私にアベルとココットは緊張の面持ちで小さく頷いた。

私も小さく頷き、薬草が入った籠を地面に置き、震える体を抑えて立ち上がる。



そして、アベルとココットの方を振り返らずに男たちの方へ歩き出した。

森の中につくられた沿道は一本道で、私の姿はすぐに男たちの目に留まった。




「おい、もう一人女が来たぞ」


嬉々としてそう言ったのは無邪気な笑顔をする男だった。

男の声につられ、ノーラの胸ぐらを掴んでいた男と、傍観していた男の視線がこちらを振り返る。

もうこうなってしまったら後には引き返せない。



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