白銀の女神 紅の王(番外編)
「あ、貴方たち、ノーラさんを離しなさい」
こちらに集まった視線に怯みながらも足を進め、男たちの前で立ち止まって勢いのままに口を開いた。
「あ?なんだお前」
「ノーラさんの友人です」
ノーラは信じられないというような顔で私を見る。
確かに私が一人出てきたことでこの状況が変わるわけではないけど、一つの望みはもう駆けだしている。
ガサガサと樹の枝や葉を踏みつける音が森の中から響き、男たちの耳にもその音が入る。
「あ、おい。あそこ、子供がいるぜ」
「子供なんかほっとけ」
一瞬ヒヤッとしたが、男たちの関心を引き付けることが出来た。
お願い…間に合って……
森の中を振り返らずに走る子供の背をチラリとみて、願う。
アベルとココットを逃がしたのは二人の身の安全の事もあるが、最大の目的は助けを呼ぶこと。