FatasyDesire~ファンタジー・ディザイア~
彼女にとっての世界が自分だけならば、汚いものを見せず傷付くこともないのに。
そう考えるも恐らく彼女の世界にはクレド以外の人間も存在している。
キリエに恋愛感情ではないただの親愛だとしても時たま耳にする"ギル"という人間も、そこにいるのだ。
それでも今キリエを護れるのは自分だけなのだと、クレドは心の中で繰り返す。
クレドの話が終わると、キリエは緊張したように口を引き締めズボンを両手でギュッと握りしめた。
クレドと目を合わせようとはせず、何か必至に言葉を紡ごうとしている。
先程のキリエが起こした奇妙な力は、間違いなくパンドラの一種であったことは、クレド既にわかっている。
すっかり治癒のパンドラ一つだけだと思っていたクレドにとっては驚きの対象以外何でもない。
クレドもパンドラを二つ持っているが、二つ以上のパンドラを持つ人間は自分以外知らなかった。
世界中探しても極僅かだろう。
その中に二人は含まれている貴重で重宝されるべき人間であった。
「あの……えっと……その」
キリエはチラリとクレドを見やるがすぐに目を逸らして、口をごもごもと動かす。
完全な拒否とは言わないが、キリエが事情を言いたくないのは見てわかる。
そもそもそうでなければ、最初の段階でキリエは嬉しそうにクレドにパンドラがあると報告していただろう。
わたしパンドラなんだよ、すごいでしょ。と。
それをしなかったのはキリエにも後ろめたいことがあるからだ。
キリエはフランツ家にいた時のことを思いだす。
クレドに本当のことを言ってしまったら嫌われてしまうのではないか。
こんな自分を気味悪がるのではないか。
自分を見る人々の目が怖くて悲しくて、何度も泣いた。
本当は誰一人傷つけたくないのに、キリエにはそれができないのだ。
まだ精神が不安定でパンドラの制御も未熟なため、キリエには自分の力を抑えてコントロールすることがとても難しいことだった。
「……キリエ?」
気付けばキリエはポロポロと涙を零していた。
また泣き出してしまったキリエを前に、今度こそは聞き出そうと決意したクレドの意志は、いとも簡単に崩れ去ってしまった。
目の前で好きな娘に泣かれてしまっては、この男には話を促すことはできない。
甘やかすことが好きなわけではない。
だけどクレドがキリエに対して強気にでられないのは事実であった。
「キリエ、やっぱり……」
またでいいから。
そう言おうとしたクレドであったが、キリエの方が泣きながら首を横に振った。
「言う……クレドに、……はなすっ」
クレドはしゃくり上げてまともに喋れる状態ではないだろうキリエの背を優しく摩る。
クレドは小さく頷いて、小さな背中を摩り続けた。
数分嗚咽を漏らして泣いていたキリエだったが、徐々に落ち着いたのか涙でぐちゃぐちゃになった顔をティッシュで拭いた。
泣いて多少はすっきりしたのか、少しばかり覚悟を決めた顔をしていた。
一方のクレドも何を聞いても取り乱したりしないように、覚悟を決めた。
「……クレドならもうわかってるとおもうけど」
キリエは恐る恐る震える唇を開いて、自分よりも大きな手を離れていってしまわないように握り締めた。
それに応えるように、クレドも握り返す。
「わたし……ぜんぶで――5つのパンドラをもってるの」
5つ同時にパンドラを宿す人間。
それがキリエであった。
聞いたこともないそのパンドラに数に、クレドは目を見開き驚愕した。
そう考えるも恐らく彼女の世界にはクレド以外の人間も存在している。
キリエに恋愛感情ではないただの親愛だとしても時たま耳にする"ギル"という人間も、そこにいるのだ。
それでも今キリエを護れるのは自分だけなのだと、クレドは心の中で繰り返す。
クレドの話が終わると、キリエは緊張したように口を引き締めズボンを両手でギュッと握りしめた。
クレドと目を合わせようとはせず、何か必至に言葉を紡ごうとしている。
先程のキリエが起こした奇妙な力は、間違いなくパンドラの一種であったことは、クレド既にわかっている。
すっかり治癒のパンドラ一つだけだと思っていたクレドにとっては驚きの対象以外何でもない。
クレドもパンドラを二つ持っているが、二つ以上のパンドラを持つ人間は自分以外知らなかった。
世界中探しても極僅かだろう。
その中に二人は含まれている貴重で重宝されるべき人間であった。
「あの……えっと……その」
キリエはチラリとクレドを見やるがすぐに目を逸らして、口をごもごもと動かす。
完全な拒否とは言わないが、キリエが事情を言いたくないのは見てわかる。
そもそもそうでなければ、最初の段階でキリエは嬉しそうにクレドにパンドラがあると報告していただろう。
わたしパンドラなんだよ、すごいでしょ。と。
それをしなかったのはキリエにも後ろめたいことがあるからだ。
キリエはフランツ家にいた時のことを思いだす。
クレドに本当のことを言ってしまったら嫌われてしまうのではないか。
こんな自分を気味悪がるのではないか。
自分を見る人々の目が怖くて悲しくて、何度も泣いた。
本当は誰一人傷つけたくないのに、キリエにはそれができないのだ。
まだ精神が不安定でパンドラの制御も未熟なため、キリエには自分の力を抑えてコントロールすることがとても難しいことだった。
「……キリエ?」
気付けばキリエはポロポロと涙を零していた。
また泣き出してしまったキリエを前に、今度こそは聞き出そうと決意したクレドの意志は、いとも簡単に崩れ去ってしまった。
目の前で好きな娘に泣かれてしまっては、この男には話を促すことはできない。
甘やかすことが好きなわけではない。
だけどクレドがキリエに対して強気にでられないのは事実であった。
「キリエ、やっぱり……」
またでいいから。
そう言おうとしたクレドであったが、キリエの方が泣きながら首を横に振った。
「言う……クレドに、……はなすっ」
クレドはしゃくり上げてまともに喋れる状態ではないだろうキリエの背を優しく摩る。
クレドは小さく頷いて、小さな背中を摩り続けた。
数分嗚咽を漏らして泣いていたキリエだったが、徐々に落ち着いたのか涙でぐちゃぐちゃになった顔をティッシュで拭いた。
泣いて多少はすっきりしたのか、少しばかり覚悟を決めた顔をしていた。
一方のクレドも何を聞いても取り乱したりしないように、覚悟を決めた。
「……クレドならもうわかってるとおもうけど」
キリエは恐る恐る震える唇を開いて、自分よりも大きな手を離れていってしまわないように握り締めた。
それに応えるように、クレドも握り返す。
「わたし……ぜんぶで――5つのパンドラをもってるの」
5つ同時にパンドラを宿す人間。
それがキリエであった。
聞いたこともないそのパンドラに数に、クレドは目を見開き驚愕した。