銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
精霊の継承
 ぼやけた意識が、暗闇から引き戻される様に、ゆっくりゆっくり明瞭になっていく。

 そんな霞のかかったような頭で、まずあたしが一番最初に思ったことは…

(あ……? あたし、生きてるの?)

 だった。
 そして次に、強烈に感じた事は……。

(ああ! 生きてて良かったー!)

 だった。

 だって、本当に苦しかったから!
 全身を殴りつける水のせいで息も出来なくて、今まで感じたことのない、すさまじい苦痛と恐怖の体験だった。

 本当に生きてて良かったと思う。
 ついさっきまでは死ぬつもり満々だったけど、あの覚悟なんてどこへやら、だわ。

 体中を蝕んでいた毒が、すっかり抜けたような気分だ。

『命を犠牲にして復讐してやる!』って、あれほど意気込んでいたわりには、少々情けないほどの手のひらの返しよう。

 あたしの決意や復讐心なんて、しょせんその程度だったんだろうか。

(……ぶ!?)

 口の中の不快感のせいで、シリアスな思考が中断した。
 お陰で一気に、半分掠れていた意識が覚醒する。

 うえ、なにこれジャリジャリして……

 ……砂ぁ?

 なぜか、私の口の中に砂がたくさん入り込んでいる。
 その気持ち悪い感触ときたら、もう!

 べっ!べっ!
 口の中が最悪状態! 湿った砂が口腔に密着しちゃって吐き出せない~!

 んもう最低! なんで砂なんかが口の中に入ってるのよ!?

 猫が毛玉を吐くみたいに懸命に砂を吐き出しながら、体を起こそうと地面に両手を着いたとき、手の平から伝わる柔らかく熱い感触に気がついた。

 ……砂? この感触、砂?

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