銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 あたしの体の下には、砂がたっぷりと敷き詰められていた。
 なんで砂が? 誰が会社の屋上に砂なんか大量に運び込んだのよ? 物好きな。

 そう思いながら上体を起こしたあたしは、視界に飛び込んできた信じられない光景に完全に度肝を抜かされた。

 驚きのあまり、全身が硬直する。
 自分の目を疑って、両目を極限まで開いて凝視した。

 あたしは……
 広大な砂漠のど真ん中に倒れていた。

 どこまでもどこまでも続く、砂の大地。
 連なる砂丘の果ては、まったく見えない。
 地面は遥か彼方まで薄い黄色で埋め尽くされて、砂以外の何も存在しない。

 前も後ろも右も左も、見渡す限りの砂、砂、砂。

 あ、あたし、なんで会社の屋上から砂漠に移動してるの!?
 ここってドコ!? 鳥取砂丘!!?

 ……。
 ううん、違う。
 鳥取砂丘は観光したことないから良く知らないけど、確実に違う。
 ここは絶対に鳥取砂丘じゃないと断言できる。だって……。

 あたしは呆然としながら空を見上げた。
 太陽が……ふたつ有る空を。

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