銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 ムズムズと落ち着かないお尻を抱え、室内へ案内されると、すでにヴァニスとマティルダちゃんの姿があった。

 でも二人共、まだ席にはつかずに、壁にかけられている大きな絵をふたり並んで眺めていた。

 あたしも少し離れた場所からその絵を見る。

 それは家族の肖像画で、父親らしい男性が立つ傍らに、母親らしい女性が椅子に座っている。

 その手前に並ぶ三人の男の子達と、母親の膝に抱かれる幼い女の子。

 男兄弟の中で一番年下の子の顔が、ヴァニスそっくりだった。生真面目そうに直立不動で立っている。

 ということは、これはヴァニス達の……国王一家の肖像画なのね?

 亡くなってしまった家族の肖像か……。


 じっと眺めている二人に、あたしは声を掛けあぐねる。

 邪魔しちゃ悪い気がして、あたしもしばらくそのまま立ち続けていた。

 そんな気配を感じたのか、ヴァニスがこっちを振り向いた。

 つられるようにマティルダちゃんも振り向いて、あたしに笑顔を見せる。

「珍し……いえ、雫さま! どうぞ雫さまもご覧になって!」

 手招きされて、あたしは二人のもとへ近寄った。

「マティルダのお父様、お母様、そしてお兄様たちよ」

 そう説明されて肖像画を見上げる。

 金色の王冠をつけた黒髪の国王が堂々と立ち、優しそうに微笑む色白の王妃と、両親に守られるように立つ息子達と、幼い娘。

「お父様もお母様もお兄様たちも、天に召されてしまったの……」

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