銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 カチャカチャと食器が触れ合う音が聞こえて、盆に乗った料理が次々と運ばれてくる。

「席に着きましょう、雫さま」

 マティルダちゃんが笑顔でテーブルに向かった。

 ちょっとは元気が出たみたい。良かった。

 あたしもテーブルに向かおうとして、ふと足を止める。

 ヴァニスが、じっとあたしを見ていたから。

「……なによ、なんか文句でもあるの?」

「良く分かったな」

「なにが?」

「兄達が、マティルダをからかって遊んでいた事を」

「ああ、あれ? なんとなくそうじゃないかな?って」

 肖像画に描かれてる表情とか、マティルダちゃんの天真爛漫な様子とか。

 きっとそんな風に、愛されて育ったんだろうなぁって。

 年の離れた妹なんて、兄にとっては可愛いオモチャみたいなもんだろうし。

「父王や母上の言葉まで言い当てた」

「兄弟ゲンカを諌める親の言い分なんて、どこも同じよ」

 あたしは笑ってそう言った。

 我が家でもそうだった。いつも決まって『兄弟なんだから仲良くしなさい』。

 それでもケンカが収まらないと、デッカい雷が落ちてきたわ。

 あの肖像画を見てたら、そんな光景が浮かんできたの。ごく当たり前で、幸せな家族の光景が。

「型通りの悔やみの言葉は、いくらでも聞いてきた。だが、どれもマティルダが聞きたい言葉ではなかった」

 イスに座り、笑顔であたし達を見ている妹に、ヴァニスは優しい笑顔を返す。

「確かに幸せな家族だった。……感謝する、雫」

 ……感謝?

 思わずヴァニスを見上げた。

 でもその時にはもう彼はテーブルに向かっていて、表情を見る事はできなかった。
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