銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 感謝する、だなんて……。

 まさかそんな人間味のある言葉が、この男の口から出てくるなんて。

 ヴァニスのマントから鳩が出てくるより驚いたかも……。

 マティルダちゃんに促されてあたしも席に着き、そしてようやく食事が始まった。

 たっぷりな量の、肉や魚や野菜料理。
 果物も、様々な種類がどーっさりある。

 お昼ご飯だってのに、すごいボリーュムね!
 うわ、豚の丸焼き? おぉ、巨大魚の姿煮? ……でかっ!

 給仕係が次々と、豪快に料理を取り分けてくれる。

「いただきます」

 あたしが両手を合わせ、頭を下げて食事前の挨拶をするのを見たマティルダちゃんが、大喜びであたしの真似をした。

「いただきます! ほらほらお兄様も!」

「う、うむ……。い、いただきます」

 神妙な顔で頭を下げる姿がおかしくて、あたしはつい笑ってしまった。
 本当に妹に弱いのねぇ、ヴァニスって。

 正直お腹がペコペコだったから、ありがたく遠慮なく頂いた。

 敵から送られた塩だし、やせ我慢せずに食べよう。

 味付けはあっさりしていて食べやすかったし、ヴァニスもマティルダちゃんも旺盛な食欲で、たっぷりの量を食べていく。

 お陰でこっちも、気兼ね無しにがっつり食べられた。

 王家の食事風景なんて、シーンと静まり返ったお通夜みたいなもんかと思ってたけど、意外にも会話が弾んだ。

 マティルダちゃんの趣味の、アクセサリー集めの話とか。
 年頃の女の子らしく、可愛らしい装飾品が大好きらしい。

「少々難儀なほどに夢中なのだよ」

 ヴァニスが苦笑いをする。
 なるほど、品質も金額も、さぞかし普通の十代の子の趣味とは桁違いなんだろう。

 いちいち料理を珍しがり、感心するあたしの様子を見て、楽しそうに笑うふたり。

 上機嫌で料理を盛り付ける給仕達。

 和やかに食事の時間が過ぎていった。
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