銀の精霊・森の狂王・時々、邪神
 相変わらず他の場所には一滴も降らない、あたしの半径一メートル分だけの降雨。

 誰かが手の込んだイタズラをしてるのかと思ったけれど、どこを見てもなんの仕掛けもまったく見当たらず、普通に空から雨が降っているだけ。

 こうなるとさすがに恐怖心が湧いてきて、あたしは大慌てて雨のスポットライトから逃げ惑った。

 これって本当に自然現象?
 どっちかっていうと怪奇現象じゃないの?

 ちょっと、やめてよ! どこの妖怪か知らないけど、これから死のうとしてる人間相手に取り憑いてどうすんのよ!
 鈍くさい妖怪ね! あっちへ行って!

 そんな心の叱責に応えるように、ボツン!と一際大きな雨粒が頬に落ちて、悲鳴をあげた。

「……痛!」

 いや、実際は痛いわけじゃないんだけど、思わずそう言いたくなるほど大きな雨粒だった。

 あたしは濡れた頬を拭きながら、さらに心の中で文句をぶちまける。

 もういい加減にしてよ! さすがに全身ずぶ濡れだし!

 これ、どこが神様のプレゼントよ! 他の人は平気で、あたしだけがズブ濡れなんてイジメだわ!

 どこまで人の人生を愚弄すれば気が済むの!

 ついさっきは感謝していた神様に対して、散々悪態をつくあたしの頬に、さらに大きな雨粒が……。

 ―― ボツン! ボツン! ボツボツ、ボツン!

 と、連発連打で襲い掛かってきた。
 しかももう、雨粒の巨大さも尋常じゃない! 大人の拳ほどの雨粒ってどういう事なのよ!?

 巨大な雨粒が切れ間なく天上から落下してきて、今度こそ本当に痛みを感じてきた。

 だってハンパない勢いなんだものこれ!
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