俺様ホストに愛されて
皮膚が爪に食い込む感触がしたけど、みゆちゃんはピクリとも反応せず、あたしに伸ばした腕もそのまま。
ぼやける視界に全身の力が抜けて、そこにズルズル滑り落ちた。
ダメ……だ。
苦しい。
抵抗することも、言葉を発することも出来ない。
「あはは。苦しいでしょ?それでも……みゆの方がもっと苦しかったんだよ‼すぐ楽にしてあげる」
感情のこもっていない言葉は、それだけであたしの中の恐怖心を膨らませる。
この子、本気だ……。
本気であたしを……。
余力なんて残されてなかったけど、あたしは必死にもがいた。
火事場の馬鹿力ってやつだろう。
握り拳がみゆちゃんの顔にヒットし、一瞬だけ腕の力が緩んだ。
その隙に思いっきり肩を押し返した。
しゃがみ込んだままの状態で、激しく後ろに転んだみゆちゃん。
その体は、水を吸っていないスポンジのように軽かった。
「はぁ……はぁ……‼」
咳き込みながら息を吸い込んだあたしは、床を這うようにして出口を目指した。
とにかく、逃げなきゃ‼
本能がそう告げている。
なりふりなんて構っていられなかった。