恋をしたのは澤村さん

あの後帰ってきたお母さんに心配され私はそのままもう一度布団に戻る事になった。
暖かいご飯と薬のおかげで次の日にはすっかり体調がもとに戻っていた。
少し心配されたけれどマスクをして行くからと言って私は学校に行くことにした。

「田中さん、おはよ」

「お、はよう」

駅の改札を通って電車を待っていた時。
後ろから声をかけられた。
顔を見なくてもわかる。島津木くんだ。
詰まりながらもおはようと返せば島津木くんは少しおかしそうに笑った。

「……バカにしてるでしょ」

「してないよ。それより体調良くなったんだ」

「おかげさまで」

嫌みったらしく返してみても島津木くんには聞かないみたいで笑いながら耳元で囁かれた。

「で、どう?俺との事少しは考えてくれた?」

「なっ!?考えるわけないでしょ!!」

大きな声で叫べば一斉に注目を浴びて恥ずかしくなった。
小さく縮こまる私に島津木くんは今度こそおかしそうに笑って私の頭を撫でた。

「も、やめてよ!」

顔をあげれば今日はじめて島津木くんと目があった。
いつもの赤いぶち眼鏡がなく。
そのまま視線が交わる。

「眼鏡…」

「そ、コンタクトにしてみたんだ。似合ってる?」

って言うかやっと目線合わせてくれた。そう言って笑う島津木くんに私は調子を崩される。
なんかいつもと違うし。いつもより笑うし。
本当にこれ島津木くんなの?


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