竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち

そうやって決意を新たにするエリをよそに、花沙は『お前誰だよ!?』と、思わずエリが突っ込みたくなるような極上な笑顔を突然浮かべ、浮かべドアノブを引く。



「いらっしゃいませ」



エリも慌てて顔を引き締め、さざれ百貨店で培った笑顔を浮かべた。



「いらっしゃいませ!」



いったいどんなお客様なんだろう!

やっぱりテーラーにスーツを作りに来るくらいだから、ダンディなおじさまとかかな?
それともいわゆるヤングエグゼクティブ!?


割とミーハーなところがあるエリは、ワクワクウキウキしながらドアから入ってくるお客様を見つめたのだが――


「え……」


思わず我が目を疑った。



ドアから入ってきたのは一人の男性だったのだが――

年のころは六十代の、ずいぶんとくたびれた男性だったのだ。





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