竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
「――すみません、少し早いと思ったんですが……」
「大丈夫ですよ。どうぞお座りください」
花沙はにこやかに微笑むと、実に優雅な仕草でソファーへと男性を誘導する。
「あ、すみません、どうも……」
腕に紙袋を抱えた男性は、ペコペコしながら花沙とエリの間を通り、ソファーへ腰を下ろした。
その腕には、しっかりと紙袋を抱えたままだ。
下ろせばいいのに……いったい何が入ってるんだろう。
しかも、彼が着ているのはいわゆる量販店で売られている吊るしのスーツだ。
オーバーサイズで、適正サイズじゃないのはエリの目から見ても明らかだ。
この人がMistletoeのお客様?
一着何十万もするスーツを好むような人には見えないけどなぁ……。
もしかして冷やかしなんじゃないの?
花沙はこの状況をどう思っているんだろう。
不思議に思いながらも、花沙に視線を送る。
「――舎李樹(ヤドリギ)君、お茶をお願いします」
けれど花沙は見事なポーカーフェイスで、笑顔を崩さない。
彼の眼にはしっかりとお客様と認識されているらしい。