竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
「あ、はいっ!」
そうだったお茶淹れるんだった!
エリは慌てて、サロン左手のドアを開け飛び込んだ。
(初めてここに連れてこられた時、月翔が入って行ったことを思い出したのだ)
案の定、そこはキッチンフロアで、月翔がきれいに使っているに違いない、屋敷のキッチンと雰囲気がよく似ている。
「お茶、紅茶、それともコーヒー……?」
お湯を沸かしながらガチャガチャと棚を探すエリ。
色々あったが、とりあえず手前に置いてある茶筒と急須が一番に目に入ったので、日本茶を出すことにした。
ついでに冷蔵庫の中から水羊羹も発見したエリは、「あとで私もいただこう」と、ほくそ笑みつつ、お茶を淹れる。
お盆の上に湯のみと受け皿、お茶菓子を乗せ、エリはサロンへと戻り、男性の前にそれらを並べる。
「どうぞ」
まずお客様へ。そしてテーブルを挟んだ花沙の前へ。本当は自分も並んで座ってお茶をいただきたい気分だったけれど、グッと我慢して、お盆を持ったままソファーを離れた。
と言っても、話の内容が気になるので、少し距離を置いて花瓶の様子を見るふりをしながら、二人の会話に耳を傾ける。
「――堀田さま、今日はどういったご用件でしょうか」
「――」