竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち
エリが思わず問いかけると、花沙は一瞬その猫のような瞳を細めたが、
「わ、私も知りたいです」
堀田が後押しするように言ったため、軽くうなずき、スーツの正面を二人に見えるように広げる。
「ここ……正面のヒダですよ。英国スタイルの特徴です」
花沙の指が、しなやかに上衣の表面をなぞる。
「あの……高いんでしょうか」
「は?」
「ほら、よくテレビでどこぞのブランドのスーツが何十万だとか、芸能人が着てるじゃないですか。あんな風に価値があるんですか?」
「あれらと一緒にしないでください」
花沙は目の前にいる男が客だということを忘れたのか、少し不機嫌そうに眉根を寄せる。
「ああいった、いわゆるデザイナーブランドの流行を追ったスーツは、カジュアルスーツに準拠します」
どうやらテーラーにとって、いっしょくたにされるのは我慢ならないことらしい。
テーラーにはテーラーのプライドがあるんだろうなぁ……ちょっと、めんどくさいかも……。
そんなことを思いつつ、じいっと花沙の持ったスーツをじっと見つめていたエリは、「あ!」と、思わず声をあげていた。