竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち

遠い国の女王様に謁見して、彼女の息子……王子様の服を作った話。
そしてその王子とメイドの身分違いの恋の話。

目が覚めるようなターコイズブルーの瞳をした貴族の青年のスーツを、たった一週間で仕上げた話。

熱い砂漠の国の、民族衣装しか着ないと決めている王様に、ラクダに乗って会いに行って、スーツをあつらえた話。


女王の広大な敷地内の石畳を走る、馬車の蹄の音

鬱蒼としげる森

満点の星空。熱砂の空気――



世界中を飛び回っているという父のお話は、どれもこれも、子供心にワクワクと胸をときめかせる物語だった。


我慢しきれずに『いつかエリも一緒に連れて行って』とせがむと『エリィが大人になったらね』と毎回あしらわれて、悔しくてたまらなかった。

そんな時、興奮のあまり額に汗するエリの額にキスを落とし、父はささやいたものだ。



『エリィ。君が素敵なレディになったら……』



レディになったら?

何よ、レディって。

私なんか棒っきれって言われてるんだから――



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