竜家の優雅で憂鬱な婚約者たち

その間『あの人』が自分たちの前に姿を現したのは一度きりで……

それっきり。



なのに今更『お父さんに会いたい?』

私が会いたいと思うとでも?


自分の唯一の味方だったはずの母がどうしようもなく、今ここにいない父親の分まで、憎らしかった。



「嘘つき……。いなくなったくせに……あの人は嘘つきだよ! そんな人に会いたいわけないじゃない!」



叫ぶと酸欠でクラクラした。



マー君も、お母さんも
あの、雨の中でたたずんでいた男も、みんな嫌いだ。



「もう、勝手にすれば! どうせ私なんか信用されてないんだから!」



気が付けばエリは、ドスドスと足音を踏み鳴らしダイニングを飛び出していた。




――――……




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